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サイバーセキュリティと規制コンプライアンスにおける契約管理の役割

ドキュサイン
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金融業界では、サイバー攻撃の増加や規制強化により、情報セキュリティとコンプライアンス対応が重要性を増しています。契約管理は文書の管理にとどまらず、企業の信頼性や事業継続を左右する戦略的な役割を担っています。本記事では、その対策と重要性を解説します。

A person holding a phone displaying a security login screen.

セキュリティ最前線:契約情報こそがサイバー攻撃の最終標的

金融機関における契約書は、取引の根拠であり、法的拘束力を持つ最重要の機密情報です。万が一、外部に流出したり改ざんされたりすれば、その影響は計り知れません。近年では、契約書の保管場所や契約管理システムそのものが攻撃対象となるなど、手口も多様化しています。

たとえば、標的型攻撃によって電子契約システムのログイン情報が奪われ、不正な契約の締結や情報漏えいにつながるケースが増えています。フィッシング詐欺などで銀行員の認証情報が盗まれた場合も、不正送金や不正な契約締結に悪用されるおそれがあります。

さらに、内部不正によって顧客の機密情報が持ち出されれば、資産状況や取引履歴などが漏えい・悪用されるだけでなく、風評被害や株価の下落といった二次被害に発展する可能性もあります。

実際に、個人情報保護法に抵触するおそれがある行為が確認されたとして、2024年には金融庁が大手証券会社や銀行に行政処分を、2025年には大手損害保険会社に対して業務改善命令を出すなどの事案も起きています。

また、法人である金融機関が個人情報を不正に利用した場合や、個人情報保護委員会の措置命令に違反した場合には、最大で1億円の罰金が科される可能性もあります。過去には、情報漏えいにより数千万円の損害賠償が支払われたケースもありました。

こうしたリスクは、契約管理のあり方そのものを見直す必要性を示唆しています。アクセス制御や暗号化、改ざん防止機能などを備えたデジタル契約管理システムの導入は、セキュリティ強化における有効な対策となるでしょう。

契約業務に潜む情報漏えいのリスクとデータプライバシーの重要性

契約書には、顧客の氏名や住所、口座番号といった個人情報、法人の未公開財務情報や経営戦略、取引条件など、極めてセンシティブな情報が凝縮されています。これらの情報が漏えいした場合、金融機関は顧客からの信頼を失うばかりでなく、巨額の賠償責任や行政処分を受ける可能性も考えられます。

国内では、「個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)」や「マイナンバー法」(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)などが整備されており、取り扱いには慎重さが求められています。これらに違反した場合、数億円規模の課徴金や業務改善命令といった行政処分、さらには役員の刑事責任が問われるケースもあります。

加えて、海外にも拠点がある金融機関であれば、顧客データや取引データの越境移転や手続き、処理において、欧州のGDPR(一般データ保護規則)への準拠も不可欠です。違反時の制裁金は全世界年間売上の4%または2,000万ユーロのいずれか高い方と、極めて高額なものとなります。

これらを考慮すると、契約書の「作成」「保管」「共有」「廃棄」に至るすべてのプロセスで、情報が安全に管理される仕組みを構築することは、金融機関の責務と言えるでしょう。

コンプライアンスの要:契約管理が果たす3つの役割

金融業界における「規制コンプライアンス」は、法令遵守に加えて、業務全体にわたる内部統制の確立を意味します。特に以下の規制に対しては、契約管理の役割が非常に大きくなっています。

1. AML(マネー・ローンダリング防止)

AML規制では、不正資金の流通を防ぐために、取引相手との関係を明確に記録し、一定期間保存することが求められます。契約書は、その取引が正当なものであることを示す核心的証拠であり、その真正性(誰が、いつ、何に合意したか)の確保と、改ざんを許さない仕組みが不可欠です。電子署名システムが提供する詳細な監査証跡は、この要請に応える上で強力な武器となります。

2. KYC(本人確認)

「その顧客は本当に本人か」「取引の目的は何か」を契約締結時に確実に確認し、その記録を保持することはKYCの基本です。電子署名プロセスにおける認証レベルの選択や、署名プロセス全体の記録は、非対面取引が増加する現代において、法的要件を満たす上で不可欠な要素です。

3. GDPR(欧州一般データ保護規則)

GDPRでは、契約データを含む個人情報の処理に厳格な基準が設けられています。サーバーの所在地やアクセス管理、削除権(Right to be Forgotten)への対応など、契約データの扱い方そのものが規制対象です。これらの要求に応えるためには、契約データがどこに、どのように保管され、誰がアクセスできるのかを正確に把握できるシステムが前提となります。 契約管理は、もはやバックオフィスの一部門が行う形式的な事務作業ではなく、金融機関のコンプライアンス体制そのものを支える中心的機能であることを、経営層から現場担当者まで全員が認識する必要があります。

金融機関の契約業務に潜む課題と落とし穴

金融機関の契約業務には、どのようなリスクが潜んでいるのでしょうか。以下、5つのポイントを紹介します。 ・契約書の不適切な保管(共有フォルダでの乱雑な管理など) ・PDFファイルの上書きや印刷物の改ざん ・機密となる契約書や関連書類の誤送信 ・契約の更新期限や自動更新の見落とし ・契約書の所在が不明で、監査に対応できない

これらの課題を放置することは、業務効率の低下だけでなく、顧客からの信頼の失墜、さらには損害賠償や行政処分などの経営リスクに直結します。

安全で規制に対応したあるべき契約管理

潜在的なリスクを回避し、金融機関の信頼性を盤石にするためには、契約管理のあり方を根本から見直し、以下の3つの要素を備えた体制を構築する必要があります。

1. 契約情報の一元管理と可視化 契約の起案からレビュー、締結、保管、更新、廃棄に至るすべてのライフサイクルをデジタルで一元的に管理し、契約ステータスや関連情報をリアルタイムで可視化できる仕組みが不可欠です。これにより、内部統制の強化はもちろん、監査や当局報告への迅速かつ正確な対応が可能となります。

2. 検索性と利便性の確保 必要な契約書や関連情報を、キーワードだけでなく、契約金額、契約期間、取引相手、担当部署といったさまざまな属性情報(メタデータ)から瞬時に検索できるシステムが求められます。これにより、「契約書を探す」という非生産的な時間を削減し、契約データ分析によるリスク検知やビジネス機会の発見といった、より戦略的な活用へとつなげることができます。

3. セキュリティとアクセス管理の強化

契約情報へのアクセス権限を役職や担当業務に応じて細かく設定し、誰が、いつ、どの契約情報にアクセスし、何を行ったのか(閲覧、編集、承認など)をすべて記録・追跡できる仕組みは、情報漏えい対策の基本です。特に、顧客や外部企業とのデータ連携においては、強力な暗号化通信と多要素認証などの認証強化への対策が欠かせません。

信頼性の高い契約管理なら「ドキュサイン」

上記のような「あるべき契約管理」の実現を強力にサポートするのが、ドキュサインです。電子署名におけるグローバルスタンダードとして、世界中の多くの金融機関で採用され、その信頼性と実績は高く評価されています。

ドキュサインには、以下のような特徴があります。

  • 堅牢なセキュリティ基盤:

    • AES 256ビットによる暗号化で、保管中および転送中の契約データを保護。 

  • ISO 27001、SOC 2 Type 2といった国際的なセキュリティ認証を多数取得しており、厳格なセキュリティ基準を満たしていることを第三者機関が証明。 

  • アクセス管理機能と、操作ログを含む詳細な監査証跡の記録により、不正アクセスや内部不正を抑止・検知。  

  • グローバルなコンプライアンス対応力:

    • 米国のESIGN法、EUのeIDAS規則といった主要な電子署名法に準拠。  

    • 日本の電子署名法や電子帳簿保存法への対応もサポート。  

    • GDPR対応を考慮したプライバシー管理機能を提供。  

契約管理は、信頼と遵法の象徴である

昨今、サイバーセキュリティの脅威は増し、コンプライアンス要件も複雑化しています。契約管理の重要性は今後さらに高まるでしょう。

今や「契約書を保管する」だけでは不十分です。 「誰が、いつ、なぜ契約したのか」を一貫して追跡・保護できる体制が求められています。

金融機関において契約管理のDXは、情報漏えいリスクを最小化し、顧客からの信頼を守るために欠かせません。これらの管理においてドキュサインは、さまざまな金融機関で導入が進んでいます。 契約管理の役割は、リスク対策や法令遵守にとどまりません。 近年はESG投資への関心の高まりを受け、サステナビリティ要件や倫理条項の履行状況をトラッキングし、開示義務に対応する機能も求められています。

こうしたニーズに応えるには、単なるシステム導入ではなく、全社レベルでのガバナンス強化と運用体制の見直しが不可欠です。

ドキュサインは、リスク管理と効率化を両立する次世代のコンプライアンス基盤として期待されています。 契約ごとのステータス管理、改定履歴、AIによるリスク検知など、多彩な機能で金融機関を支援します。

契約管理の質は、企業の「説明責任力」そのものです。 単なる規制対応を超えて、「なぜその契約だったのか」まで語れることが、揺るぎない信頼につながります。

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